2007年12月09日

『夜の銀座の資本論』浅川夏樹

たまたま書店でみかけて購入しました。さぞかしエキゾチックなアングラ経済の話題でも出てくるのかと想像していたら、意外にも中身はむしろ「経済理論のまっとうな入門書」でありました。比較優位にサンクコスト、機会費用といった経済の基本がよくわかります。というか、自分の身の回りでどれだけ経済の基本を無視した意思決定が行われているかに改めて気づいて、暗澹とした気になりました。

著者のサイトのURLが掲載されていたのでアクセスしてみました。

ハッピーリタイアメントへのパスポート

こちらも実にまっとうな海外投資の案内サイトでありました。おみそれしました。

夜の銀座の資本論―お金にモテる人になる! (中公新書ラクレ 263)
浅川 夏樹
中央公論新社 (2007/12)
売り上げランキング: 429

2007年06月13日

『日本経済のリスク・プレミアム』山口勝業

『内藤忍の資産設計塾(実践編)』にヒストリカルデータを提供していたのがイボットソン・アソシエイツ・ジャパンで、『日本経済のリスク・プレミアム』の著者である山口勝業氏はその社長です。「ファイナンス業界の黒幕(大ボス)登場!」といった雰囲気ですが、本書のカバーに記されたプロフィールによれば、「大学時代は社会学と社会心理学を専攻し、シンガー・ソングライターをめざすが、就職面接前日の新人コンテストで敗退して日本長期信用銀行に就職」とずいぶんファンキーなおっさんです。とはいえ長銀時代にMBA留学し、日米両国でファンドマネージャーの実務経験があるなど、実務とアカデミックな面の両方に精通した人のようです。

本書の内容は、日本の株価、金利、為替の長期データから、リスク・プレミアムを定量的に検証したものです。その中でもっとも衝撃を受けたのは、日本の株式について「わが国では70年代半ば以降30年間にわたって、サプライサイドから推計したリスクプレミアムはほぼゼロであった」と結論づけている点です。つまり、投資家にとっては「失われた10年」ではなく「失われた30年」であり、株式なんぞに手を出しても、長期国債のような無リスク資産以上のリターンを見込めない時代が、2003年まで続いていたということです。

もちろん、2003年からのリバウンド局面や、2005年の大幅上昇もあったわけですが、これが日本経済の構造変化を示すのか、それとも単なるリバウンドやボックス内の循環局面なのかは予断を許さないところです。

気軽に読むには定価が高めの本ですが、業種要因を除いたバリュー株・小型株のリスク・プレミアム検証など、興味深い内容がぎっしり詰まっています(本書の元になったレポートの一部は、イボットソン・アソシエイツ・ジャパンのサイトで公開されています)。今年読んだ本の中ではいまのところベストです。

リンク:
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
わが国産業の株式期待リターンのサプライサイド推計(PDF)

日本経済のリスク・プレミアム―「見えざるリターン」を長期データから読み解く
山口 勝業
東洋経済新報社 (2007/03)
売り上げランキング: 132954

『円の足枷』安達誠司

2003年以降のデフレ解消局面は、財務省による大規模なドル買い介入と日銀の量的緩和という事実上のリフレ政策によってもたらされたが、これは日銀の政策転換を示したものではなく、日本の政策担当者には円高を是とする考え方が根強くあり、それが早すぎる量的緩和解除・ゼロ金利解除につながり、デフレからの完全脱却を阻害する要因になっている、というのが本書の主張です。

一見リフレ派(あるいはインタゲ派)の単純な主張にも見えますが、デフレが解消していない状況で、物価動向に先行した利上げやマネタリーベースの伸び率鈍化は続くのか、1ドル125円を越えるような局面で(財務省の)為替介入が発動されるのか、といった点は、為替や金利の動向を理解するうえで重要なポイントになるのではないでしょうか。

為替変動の国際分散投資への影響は、長期的にはニュートラルなのでしょうが、短期的なリターンや投資タイミングの判断には影響を与えます。その意味で、日頃の金融ニュースを読むときの背景分析として注目できる主張だと思いました。

円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋
安達 誠司
東洋経済新報社 (2007/02)
売り上げランキング: 199915

『ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第9版)』バートン・マルキール

インデックス投資派の「聖典」に最新版が刊行されました。

第10章「行動ファイナンス派の新たな挑戦」、第13章「投資家のライフサイクルと投資戦略」を加えて、全体の30%ほどが新しくなっているとのことなので、早速読んでみました。

旧版を読んだ当時は海外投資の環境も整っておらず、国内株式へのインデックス投資には確信が持てない状況でしたが、井出正介氏の訳者あとがきにある「わが国の投資家にとってもっぱら啓蒙の書であった『ウォール街のランダム・ウォーカー』が、ようやく投資実践のためのバイブルになったのである」というのが実感できる投資環境になってきました。

もっとも、著者は「セミストロング型と特にストロング型の効率的市場理論に対する煮え切らない姿勢がたたって、私はいくつかの学者集団からは破門同様の扱いを受けている」そうで、個別株投資やアクティブファンド選択についてのアドバイスも最終章で記述しています。

13章「ライフサイクルと投資戦略」は興味深く読んだものの、本書にあるような年齢(および投資期間)に応じたアセット・アロケーション構成よりは、山崎元氏の『お金を増やす本当の常識』にある「取ることのできるリスクの大きさを決めるものは、主として財産的な余裕の大きさ」という主張のほうが妥当ではないかと思いました。

ともかく、個人投資家にとっては『聖典』であり『原典』ですから、受け売りの本を何冊も読むくらいなら、本書を読んでおいて損はないと思います。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理
バートン マルキール 井出 正介
日本経済新聞出版社 (2007/05/25)
売り上げランキング: 746

2007年06月09日

『お金をふやす本当の常識』山崎 元

・長期投資でもリスクは減らない
・ドルコスト平均法を信じすぎるな
・株価指数を知りパッシブ運用に注意

と、個性的な主張をブログでも展開されていて興味をもったので読んでみました。ところどころ「?」となるところはありましたが、家計のP/L、B/Sの作成や許容リスクの考え方(年齢ではなく財産的な余裕で決まる)は参考になりました。すべてをこの本のとおりにしようとは思いませんでしたが、アセットアロケーションの一部は個別の個別株式で運用しようと思ってますので、その点で役立てたいと思います。


お金をふやす本当の常識―シンプルで正しい30のルール
山崎 元
日本経済新聞社 (2005/10)
売り上げランキング: 2051

『内藤忍の資産設計塾』内藤忍

もう少しアセットアロケーション関連の本を読みたくなって、実践編とあわせて読み始めました。

マネックスの取り扱い商品に偏っているのではないか、という意見もありますが、内容は十分納得のいくものです。

・各資産クラスのリスク・リターンと相関係数を独自に示している
(実践編ではイボットソン・アソシエイツ・ジャパンの長期データを公開)
・アセットアロケーションを実践するための具体的な商品を説明
(そのまま真に受けるのではなく、考え方として参考になります)
・なにより、資産形成のための基本的な考え方がわかりやすい
(あくまでも「人生の目標」が優先)

という点で、大いに参考になりました。


内藤忍の資産設計塾―あなたの人生目標をかなえる新・資産三分法
内藤 忍
自由國民社 (2005/01)
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内藤忍の資産設計塾 実践編 ―自分も資産も成長する新・資産三分法
内藤 忍
自由國民社 (2005/12/14)
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『臆病者のための株入門』橘玲

『みんなの投資』の次に感心したのがこの本です。投資手法をインデックス投資、トレーディング、バリュー投資の3種類に分類したうえで、8割程度をインデックス投資、残りをトレーディングまたはバリュー投資、という提案をしています。また、「正しくないことをする自由」を求めて、著者がこの方法を実践していないというポジショントークもされています。このあたりを理解するには、小説『マネーロンダリング』などこの著者の他の作品を読んだり、海外投資/デイトレードの実践を始めた人たちのチャレンジの歴史をネットから探してみるのがいいかもしれません。

著者は1990年代から海外投資を実践していた人ですから、インデックス投資の手法についても、
・各国証券取引所の時価総額比率でインデックスに投資する世界株式ポートフォリオが基本
・海外証券会社を利用してETFを購入すれば、国内の投資信託よりさらに低コスト
として紹介しています。

特に、SPY(スパイダーズ、ETFの元祖でS&P500指数に連動)とEFA(MSCI EAFE指数に連動、アメリカ以外の先進各国の総合インデックス)の2本に等金額投資するだけで、世界全体に投資できる、というのは目からウロコが落ちる思いでした。

海外証券会社しか手段がなければ、ちょっと敷居が高すぎて実践はしにくいですが、国内でも楽天証券が海外ETFの取り扱いを始めたことや、他の証券会社の店頭でも扱っていることをホンネの資産運用セミナーで知り、有力な手段として検討することにしました。


臆病者のための株入門
橘 玲
文藝春秋 (2006/04)
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2007年06月04日

『みんなの投資』藤田郁雄

投資関連の本を読み漁り始めたわけですが、(主に翻訳書で)良書は多いものの、実践に役立つものはほとんどありませんでした。そんなときに手にしたのがこの本です。

『みんなの投資』サポートサイト

個人的によいと思ったところは以下の点です。

・著者が自分のポジションを明らかにして書いている
金融ビジネスに利害関係のない個人投資家だから、中立的な立場で個別の金融商品に踏み込んで具体的な手段まで提案できている

・海外債券インデックスファンドの活用
効率的なアセットアロケーションを実現する上で、海外債券クラスへのローコストな投資がボトルネックになっていることがよく理解できた

・シンプルかつ具体的な提案内容
掲載内容がかなり絞り込まれていて、「なるべくリスクを抑えて初心者でも投資を始められるようにする」という点で、実践的なものに仕上がっている

というわけで、投資を始めるにあたってはかなり参考にさせていただきました。

みんなの投資 投資信託でゆっくり確実に資産をつくろう!
藤田 郁雄
ダイヤモンド社 (2006/04/21)
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